21世紀の新しいマテリアル創成の概念 バイオミメティック材料プロセシング
当研究室では「バイオミメティック材料プロセシング」,「バイオマテリアルプロセッシング」をおもに研究しています.生物や生体は巧妙な構造とすばらしい機能を持ち、とてもミステリアスなシステムを持ちます.たとえば,動物の歯や骨,貝殻,珊瑚,真珠,イネ科をはじめとする各種植物中のプラント・オパール,珪藻・放散虫などのオパール骨格,磁性細菌中のマグネタイト微粒子などに見られるように,生物は常温・常圧で無機結晶を合成しているのです.これらの生体内セラミックス合成プロセス,いわゆるバイオミネラル化(バイオミネラリゼーション,biomineralization)といい,環境への負荷が極めて小さいことが特長であります.このバイオミネラル化を人工的に模倣することが可能になれば,理想的な環境調和型の材料プロセスが実現させることができます.
一方,現在,人類の活動によって生じる地球環境への悪影響が大きな社会問題となっています.材料工学の分野においても,エネルギー使用量が少なく,有害な排出物のないプロセスによって,使用後環境に排出されても問題とならない材料を合成することが重要になっています.このため,21世紀には環境調和型材料プロセスの開発が最優先課題となっています.
このように,「生物の生み出す物質,構造,機能,プロセスなどを学び,理解し,洗練させることにより,新しい機能材料をデザインし,創製すること」ことができれば,社会に対して多大な貢献ができるのです.
このような材料創製技術を「バイオミメティック材料プロセシング」と呼びます.これは最近急速に発展し,革新的テクノロジーを目指す学際的な分野となっています.材料工学,生物,化学,物理,医・歯学などをはじめとする幅広い学問分野が関連しています.
当研究室では「バイオミメティック材料工学」とも呼ぶべき,生物科学と材料工学の融合によって生まれる新しい研究分野を開拓し,さらにその工業分野の構築をめざします.
とくにバイオセラミックスとして注目されている水酸アパタイトを中心に、それと関連したリン酸カルシウム化合物の合成方法とそれらのキャラクタリゼーションを検討している。とくに合成した粉体の粒子形態とその結晶成長方位に注目し、結晶構造と生成粒子の形態との関係を解明し、それを水酸アパタイトの粒子形態制御に利用しようという研究である。アパタイトに関する研究は世界的に研究者も多く、毎月多くの論文が報告されているが、当研究室のような粒子形態や粒子径に着目したものは少なく、国内外の研究者から注目されている。
平成5年度に設立した生体材料工学研究会による共同研究テーマである。他学科の研究者、さらには研究に関連した他大学の研究者によって構成されている。今年度は「生体材料の機械的強度とトライボロジーの評価」というテーマで共同研究されている。
ウィットロッカイトはCa18Mg2H2(PO4)14とあらわされるリン酸カルシウム質の天然鉱物であるが、いままではあまり合成方法やそのキャラクターなどが知られていない化合物である。しかし、生体材料として現在利用されている水酸アパタイトと同じ、カルシウムとリン酸とでできていることから新しい生体材料としての利用が期待される材料である。
セラミックス粉体の研究としては無機顔料の研究も行なっている。パール色を発する無機顔料は化粧品や自動車塗装などで最近非常に需要が伸びている材料である。基材となる表面の平滑な板状結晶の合成マイカに光の干渉色を発するためにチタニアを被覆した顔料である。このパール発色をするためのチタニアの被覆条件や新たなチタニアの被覆方法などを検討している。
現在日本ではリン資源を輸入に100%頼っている.しかし,将来的にはリン資源の枯渇が考えられることから,リン資源の有効的な回収法を研究している.リン資源としては牛骨中に含まれるリン酸を抽出し,コラーゲンを分離し,これらの資源をリサイクルする技術の確立をめざしている.さらに下水汚泥焼却灰からリン分だけを除去・回収し,それをセメント原料として利用することを研究している.
機能性の高い無機リン酸塩の合成をめざしている.
・紫外線吸収顔料
・二色性発色顔料
最近,アメニティー商品の積極的な商品開発により,抗菌処理をした製品や材料がたくさん世の中にて出てきている。当研究室では銀系のセラミックス抗菌剤について研究している.最近ではヨウ素化合物含有アルミニウム陽極酸化膜の抗菌特性をしらべ,興味ある結果を新聞等に発表している.
共同研究(外部研究室)テーマとして,東京工業大学原子炉工学研究所矢野豊彦助教授との共同研究で,噴霧熱分解法によるセラミックスの合成や透過型電子顕微鏡によるセラミックス微構造の観察などを行なっている.昨年度からは東京医科歯科大学生体材料工学研究所山下仁大教授との共同研究を進めている.外研場所とテーマを以下に示す.
1)東京工業大学(大岡山) 矢野教授 噴霧熱分解法によるTiO2系光触媒の合成と評価
噴霧熱分解法による水酸アパタイト粉体の合成と評価
2)東京医科歯科大学(お茶の水) 山下教授 医用生体材料の合成と評価